- 中途採用計画が年間250名規模に拡大する中、採用専任スタッフはわずか3名で対応しており、一人当たりの負荷が非常に高かった。
- 採用チャネルの7~8割を人材紹介エージェントに依存し、ダイレクトソーシング(直接スカウト)やリファラル採用など自社で候補者を集める仕組みが未整備だった。
- 航空・宇宙・防衛や原子力など専門性の高い職種が多く、該当人材が市場に少ない中で 潜在層との継続的な関係構築(タレントプール) ができていなかった。
- 退職者(アルムナイ)ネットワークを活用したビジネスマッチング施策はあったが、それ以上の活用はできておらず、再雇用のプロセスを構築できていなかった。
- Alumyタレントプールシステムに全面リプレイスし、アルムナイ・キャリア登録者・選考途中辞退者など複数属性を一元管理。従来システムで網羅しきれていなかったターゲットへ、採用観点からのアプローチが可能になった。
- 採用担当者自らが各部署の要望をヒアリングして求人票を作成し、Alumy上でダイレクトソーシング機能を活用。(求人票のAlumyへの入稿とダイレクトソーシングはAlumy側で代行。)
自社による採用チャネルを拡充。 - アルムナイ向けにはビジネス協業の場としてのコミュニティを維持しつつ、優秀な人材が「いつでも戻れる」受け皿を整備。将来的な即戦力再雇用につなげるための環境を構築。
- タレントプール内で候補者の行動履歴を可視化でき、Alumyの検索・タグ機能で迅速なアプローチが可能に。選考途中で辞退となってしまった候補者にも継続的な接点を持つことで、中長期的な機会が可能に。
- エージェント依存度の低減により採用コストを圧縮しつつ、幅広いポジションでAlumyによる自社リストから能動的に候補者を確保。
- アルムナイとのネットワーク強化により、専門知識を持つ即戦力OB/OGの復職が実現すれば育成期間の短縮や定着率向上が期待できる。現時点でも情報発信を通じた企業ファンの醸成が進みつつある。
株式会社IHIは、航空エンジンやエネルギー・防衛関連機器を手がける総合重工業メーカーです。コロナ禍明け以降の事業拡大を背景に中途採用を大幅に強化しています。同社人事部 採用・人財開発グループで中途採用を担当し、タレントプール構築プロジェクトの取りまとめ役を務める今井 洋之さんに、他社システムからの切り替えの背景、Alumy導入の経緯や狙い、その効果について伺いました。
大規模採用の開始と採用体制の課題
Q: 急増する中途採用ニーズに対し、どのような経緯で課題を感じ始めたのでしょうか?
A: 今井さん: IHIでは2023年度から中途採用を大幅に拡大しました。特にコロナ禍で落ち込んでいた航空エンジンのメンテナンス事業(MRO)や、防衛関連事業へのリソース投下を進めており、ポストコロナで増加する航空需要や防衛予算の拡大に対応するために人員が急務となったためです。
例えば、航空エンジンのライフサイクル事業では、コロナ禍で飛行機が飛ばず大赤字となった反動で、現在はインバウンド需要や世界的なフライト増加により事業が急拡大しています。また、防衛産業でも国内で対応できる企業は限られており、受注が増えるほど「今、採用しておかなければ将来の案件に対応できない」という状況でした。航空エンジン開発は10~30年、次世代戦闘機エンジン開発も長期スパンのプロジェクトです。5年後、10年後を見据えて今から多くの人材に来ていただかないと将来に備えられない――そうした経営判断で採用を強化しています。
Q: 採用対象の職種やポジションについても教えてください。業界特有の難しさはありますか?
A: 今井さん: 職種としては機械系エンジニアが中心です。事業拡大中のMRO分野では、生産管理やサプライチェーン、そして製造品質の確保が特に重要領域ですね。また新規エンジン開発に関わる設計職や、MRO向けの改良設計・維持設計のポジションも多く募集しています。ただ、航空業界は規格や品質基準が非常に厳しく、該当する経験人材が社外には少ないのも事実です。そのため人材要件を満たす経験者を即戦力で採用する難易度は高いです。ある程度は入社後に育成する前提でポテンシャル採用も行っていますし、品質保証の部門一つとってもファースト~サードディフェンスラインまで組織が分かれており、それぞれで必要な人材像に合わせて採用計画を立てています。「経験者が見つからないから採用できない」ではなく、将来を見据えて育成前提で採るポジションも明確にし、組織として育てていく方針で臨んでいます。
Q: 採用を推進する人事部の体制はいかがでしょうか?現場部門との要件定義や採用計画策定は誰が担っているのですか。
A: 今井さん: IHIでは2025年度に人事部内に「採用・人財開発グループ」が発足し、新卒採用・中途採用と入社後の人材開発・エンゲージメント向上まで一貫して担う体制になりました。私自身は採用チーム側の人間ですが、現在は各事業部からの要員計画のとりまとめや採用計画の策定、求人票の作成支援(要件定義)まで一人で幅広く担当する状況です。前職も含め現場との折衝は経験していますので、「採用コンサルタント」的に各部門の採用ニーズをヒアリングし、適切な形で求人に落とし込む役割です。
エージェント頼みからの脱却とタレントプール構想
Q: 採用業務における課題はどんな点にありましたか?
A: 今井さん: 大きく二点あります。一つは採用チャネルの活用が偏っていたことです。以前のIHI中途採用は人材紹介エージェント経由が主流で、実に採用全体の7~8割を占めていました。残りを自然応募やリファラル(社員紹介)、ダイレクトソーシングが10~15%ずつという状況で、母集団形成をエージェント任せにしている状態です。
もう一つは採用チーム内のナレッジ不足です。私が着任するまで、中途採用チームの3名のうち2名は元エンジニア、1名は工場総務など現場畑の出身で、専門のリクルーターではありませんでした。そのため最新の採用手法や各チャネルの効果的な使い方について知見が少なく、「とりあえずエージェントに頼る」以外の選択肢があまりない状態でした。

Q: 採用目標数の増加に対して、そうした課題をどう解決しようと考えたのですか?
A: 今井さん: まずは社内の採用チャネルを増やすことに注力しました。具体的には私が主導してダイレクトソーシングやキャリア登録の仕組みづくりに着手し、徐々に社内にもノウハウを広めていきました。ただ、すぐに応募者数を劇的に増やすのは難しいため、当面はエージェント活用と両輪で走らせています。また、将来的な候補者のストックを作るタレントプールの必要性も強く感じていました。中途採用では応募があってもポジションがなければ見送りになりますし、選考途中で辞退・見送りとなった優秀な方々とも一旦関係が途切れてしまいます。こうした「今すぐは採用に至らなかった人材」に継続してアプローチできる基盤がないことは大きな機会損失だと感じています。
既存アルムナイ施策を支えるシステムの限界とAlumy導入の検討
Q: IHIでは以前からアルムナイネットワークの取り組みがあったと伺いましたが、当時はどのように運用されていたのですか?
A: 今井さん: はい、当社にはもともとアルムナイとの交流サイトを活用したアルムナイ施策が存在しており、アルムナイ向けのシステムを導入していました。
ただし目的は再雇用ではなく「アルムナイとのビジネスマッチング」でした。退職されたOB/OGの方と在籍社員がお互いアカウントを持ち、個別に連絡を取り合って協業の機会を探る、といった使い方です。利用者も十数名規模と限定的で、採用ツールという位置付けではなかったですね。
また、そのシステムは当時の人材開発グループ(社員研修やキャリア開発を担当する部署)が所管しており、私たち採用グループはノータッチでした。(人材開発グループと採用グループは2025年度に統合)
Q: Alumy導入のきっかけを教えてください。従来の施策をどのように発展させようと考えたのですか?
A: 今井さん: 私が着任して採用チャネルの見直しを図る中で、「中長期的な候補者との関係構築」に使える仕組みが社内にないことに気づきました。
ちょうどIHIでは宇宙関連事業(ロケット打ち上げなど)でニュースになることもあり、「IHIに興味があるがどのポジションに応募すれば良いかわからない」という声が外部から寄せられるケースもあったんです。しかし当時は自社採用ページ上の簡易なキャリア登録フォームがあるだけで、登録いただいても具体的なアプローチはできず、ポジションが出るまで放置せざるを得ない状況でした。それは非常にもったいないと感じました。
そこで既存のアルムナイ施策も含めて、「興味を持ってくれた人たちと継続的につながり、将来の採用につなげる」仕組みを作ろうと社内提案しました。

Q: Alumyを知った経緯と、導入検討の際に比較した他のサービスについても教えてください。
A: 今井さん: 検討にあたっては複数のタレントプールサービスを比較検討した結果、決め手になったのはAlumyの拡張性と柔軟さです。IHIとしてアルムナイ施策そのものは今後も「OB/OGとの交流・協業の場を提供する」ことを大切にしたかったため、その文化を損なわずに採用用途へも広げられるプラットフォームが理想でした。
Alumyであればアルムナイコミュニティ機能はもちろん、在職中に接点のあった候補者(キャリア登録者や選考辞退者など)を含めた幅広いタレントプールを一元管理でき、セグメントに応じて発信内容を変えるなど柔軟な運用が可能だと分かりました。また、他社サービスでは候補者の行動にスコアリングして自動で選別するような仕組みがありましたが、当社の場合は業界や職種特性上、機械的なスコアより担当者の目線で丁寧にフォローすることに価値があると考えています。その点でも画一的なスコア機能に頼らず運用設計できるAlumyの方がマッチすると判断しました。加えて費用面でも柔軟でした。Alumyはアルムナイに関しては実際に再入社が決まった時に成果報酬型で費用が発生し、Alumy以外のタレントプールサービスは登録人数ベースの月額課金でしたので、「まずは始めてみる」ハードルの低さも魅力でしたね。
Q: 導入にあたり社内の反応や調整事項はありましたか?
A: 今井さん: 一番議論になったのは「アルムナイの定義」をどうするかでした。既存ではアルムナイとの交流目的でしたが、Alumy導入により「将来的にIHIへ再入社してもらう可能性」も視野に入れた取り組みにシフトします。そのためには、受け入れ側である現場や人事として元社員の再雇用を前向きに捉える文化づくりも必要です。また、在職中に高い実績を上げた方であれば再入社歓迎という雰囲気は元々ありますが、制度的な受け皿(例えば出戻り採用枠の明確化など)はこれから整備していく段階です。「ビジネス協業も引き続き促進しつつ、採用プールとしても活用する」方向で社内合意を取り付け、プロジェクトを進めました。
Alumy導入後の展望と今後の採用戦略
Q: 現在Alumy導入プロジェクトはどのように進んでいますか?また、今後に向けた展望をお聞かせください。
A: 今井さん: 2025年に入り本格的にAlumyを稼働させ、まずはこれまで接点のあったキャリア登録者や選考辞退者の方々数百名にご案内を送り、タレントプールへの参加を呼びかけています。アルムナイのOB/OGの方々にも人材開発グループ経由で情報提供し、コミュニティの拡大を図っているところです。今後はAlumy上で定期的に社内ニュースや募集ポジションの情報発信を行い、「IHIファン」の層を厚くしていきたいですね。その中から興味を持って応募いただける方が増えれば、結果としてエージェント経由に頼らない自前採用比率も高まっていくと期待しています。また、航空・宇宙・防衛といった専門領域で経験を積んだOB/OGの方が戻って来られるケースが出てくれば、即戦力として大いに活躍いただけるはずです。
Alumyによるタレントプール施策は、中長期的な視点で人材確保の「土壌」を育てていく取り組みです。採用市場の変化に左右されない人材基盤を築き、将来の事業を支える力にしていきたいと考えています。
※本記事の内容は、取材時:株式会社リクルート(2026年4月以降:株式会社インディードリクルートパートナーズ)のものです。